東京牧場日記

もぐもぐ

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア


 昔読んだ本。僕等が普段接するような「ビジネスとしてのマネジメントスキル」と少し視点を変えて、学問としての経営学の中に、どのような学派があり、どのような理論が研究されているのか、という事を解説する。
 経営学で権威ある学術誌では、どのような最新論文が掲載されていて、その中ではどのような理論が研究されているのか、という点が紹介されていて面白い。
 ちなみに、入山先生は現在早稲田大学ビジネススクールで准教授をされています。
入山章栄 (AkieIriyama) on Twitter

メモ

現在の優れた企業とは、長い間安定して競争優位を保っているのではなく、一時的な優位(Temporary Advantage)をくさりのようにつないで、結果として長期的に高い業績を得ているように見えているのである。(P.68)

すなわち、(SCPの主張するように)差別化などによって業界内でユニークなポジションをとれば、それだけライバル企業との市場の重複度が低下するので、結果として積極的な競争行動もとりやすくなるはずなのです。(P.79)

ではサウスウエスト航空は、そのような守りの戦略だけで、攻めの競争行動は取っていないかというと、そんなことはありません。むしろ同社は、今も積極的に路線を拡張子、新サービスを次々に打ち出しており、積極的に競争行動を取っています。(P.80)

トランザクティブ・メモリーとは、組織の記憶力に重要なことは、組織全体が何を覚えているかではなく、組織の各メンバーが他メンバーの「誰が何を知っているか」を知っておくことである、というものなのです。(P.90)

イノベーションの停滞を避けるために、企業は組織として治の探索と深化のバランスを保ち、コンピテンシー・トラップを避ける戦略・体制・ルール作りを進めることが重要である。
この最後の点こそが、「両利きの経営」の骨子です。(P.141)

海外進出を検討する際に、市場規模や成長性のような「チャンス」要因と比べると、国民性の違いのような「リスク」要因はないがしろにされがちである。
経営学では、この国民性というモヤモヤとした概念をなんとか指数化して、ビジネスへの影響を分析することが行われている。(P.202)

近年、アントレプレナーシップの国際化が注目されている。ボーン・グローバル・ファームが台頭したり、ベンチャーキャピタリストが海外のスタートアップに投資するようになっている。(P.221)

損失が同じで済むなら、むしろ不確実性の幅は大きいいほうが事業の潜在的なチャンスは大きくなります。専門用語で言えば、不確実性が高いほどその事業のオプション価値は高くなるのです。(P.238)

ここで疑問を提示しましょう。私達が経営戦略論の研究を通じて本当に知りたいのは、はたしてガウシアン統計の手法で得られるような企業戦略の「平均的な傾向」なのでしょうか。(P.319)

しかしも、もし経営学の目的がそもそもガウシアン統計ではとらえきれない「外れ値」の企業を研究するためのものであれば、そのような企業の内情を定性的に深く分析するケース・スタディーはやはり有用なはずです。実際、日本にいらっしゃる経営学者の方々がケース・スタディーを重視する背景の一つはこのような問題意識もあると私は聞いたことが有ります。(P.335)